◇序章◇
◇ ◇ ◇ ◇
様々な人が「人間世界二種類」説を唱えている。 例えば、世界には善人と悪人がいるだとか、時間にきっちりした人とルーズな人がいるだとか。
けれど私はこう思う。 世界には二種類の人がいる。 心に傷を受けて、それでもなお他人に天使のように優しくできる人。その人はこう願っているだろう――自分が受けた傷と同じものを他の人には経験して欲しくないと。そして、心に傷を受けたことで他人に対して非情なまでに冷酷になれる人。その人はこう願っているだろう――もう二度と同じような傷を受けたくないと。
私の近くにいる彼は、一見他人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。けれど、本当は前者の人間だ。他人を放っておけない、それが心に傷を持っている人間ならなおのこと――というような絵に描いたような好青年といったところだ。 けれど私は、間違いなく後者の人間だ。
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